2011年2月2日水曜日

日本滞在記ー第10話




1月30日、とうとうこの日がやってきた。

この日は最悪にも今年に入って以来3本指に入る寒さであり、
山奥にある学校への道のりは、
南国育ちの僕にはあまりにも厳しい寒風が骨に刺さる。

そして何よりも心寒く感じるのは孤独である。
会場は同じ留学試験を受けに来た、数多くのうら若き少年少女が、
すでに寄り合い、僕の聞きなれない言葉で講談を始めていた。

中国人7割、韓国人3割・・・実際の国籍割合はどうか知らないけど、
間違いなく僕の目の前に出来上がってる、この二つのグループからして、
当たらずも遠からずだろう。

大学入る前からぼっちかよwと言う冗談を考える余裕もなく、
会場の寒さに先生早く来て・・・と強く願う留学生ズ、
試験開始時間は10時だと言うのに、8時半から現場にいる我々。
志は良いが、まさかこんな寒さの中で棒立ちとか想定外である。
当然どこの教室も完璧に開店準備中で、ドアは硬く閉じられてる。
しかもご丁寧に勝手に入るなよって感じの張り紙も張られてる。

あぁ・・試験始める前に僕遭難しそう・・・
昨晩、緊張のあまりにろくに睡眠も取れてない疲労と合さり最悪に感じる。
ここだけの話、
昨夜眠れなくてテレビつけてたら人生初の深夜アニメが見れたんだ。
深夜3時でアニメやってる国って、世界で日本しか無いよマジで。

うん、割とどうでもいい話でしたね。
その後9時半位でようやく先生?らしい方々が来て、やっとこ入場。
さっきまで群れあってヒィヒィ言ってた留学生どもの眼光がカラッと変わる。
そう、今から戦場に向かうような眼差しですよ。
学部ごとに指定された教室に入り、
席に着くと誰もが参考書を取り出し、必死で読み漁る。
先ほどまで騒然とした彼ら達とは想像出来ないほど、
教室内の空気は重苦しい。
そりゃまぁこの教室内の人間全員がライバルである。
数少ない用意された席を取り合いせねばなら敵だからな。

立ち聞きするつもりは無かったが、
教室外で会話してた中国留学生たちの話が少し耳に残ってた。

「去年この学部、最終選考に残ったのは6人で、最後合格できたのは3人だった。」
「なんで今年こんなに人が多いんだ?今30人は居るぞ、どうすんだよ?」
「合格枠増えないかなぁ、このままじゃ無理ゲー過ぎるよ」

聞かなかった方がよかった・・・余計不安になったじゃないか。

本来僕にも不安を感じるとこがあった。
それは経験不足である。

本来留学生と言うのは本国で留学向け語学学校施設に入り、
そこで語学をあるレベルまで学習し、その後施設で更に留学に向けて、
さまざまな勉強、予習など経てから、初めて外国へ飛び立つ。

ここに居る中国留学生でも韓国留学生でも、
彼らもそこから出てるのは間違いない。
なんせ対策参考書とか筆記を何本も持っていたから。
過去問の練習、面接の練習とかもちろん彼達はやってきただろう。

それに比べて僕は今までほぼすべてがスタンドアローンであり、
バックヤードからのサポートは一切無かった。
完全なる、出たとこ勝負である。
今回は丁か出るか、半が出るか。
10:00 チャイムは一切無い。
試験の運びは、すべては台の上にいる監視員の合図で行われる。

第1科目、小論文の始まりである。
試験内容は、とある文章を読み、それについて自分の考えを述べる作文。

内容を要約すると水の危機である。
環境変化などで水源地が激減していく中、水資源に纏わる最悪なシナリオ発展。
力、金ある国、企業だけが水を確保していける中、
弱小國、弱小民族は更に生きる権利を失われていく。
水はこれからもますます貴重資源になり、
それに目をつけた企業はその莫大な資源を壟断しようと、政府を唆す、
そして政府はその企業の望むままに実現しようとしてる。

もしそういう未来が実現してしまったら、世界の水事情はどうなるか?
それを想像し、具体的な地域や事情を挙げて述べよ。2時間以内600字で。


うぅー、いきなり難しいのキタコレェ・・。
でも何とか七色に光る川を持つ国を持ち出して、1時間ちょいで600字を埋める。
しかし想像以上にこの600字以内と言うハンテが厳しい。
なんと600字稿、最後の1文字スペースも残らず書き埋まらせた。

普段からブログとか書きなれてるので、
文章作りについてはそれほど難しいとは思わないけど、
要点を纏め上げて、更にそれを完璧にアピールする論文スタイルって、
実は書くのはこれが初めてなんだw

うーん・・時間は超余裕あったので、2,3回の見直して誤字直しや、
見辛い字の書き直しと言う細かい修正は出来たけど、
文章構成自体どういじりなおすかは検討がつかなかった。もう祈るしかない。


12:00 第1科目終了~昼休み開始。
科目タイトルが難しかったのか、教室から出ると一気にざわめく学生達。
言葉は理解できないが、講談してることは大概想像につく。

この日は日曜日だけど、学食ホールを開放してくれたらしいので、
日本の学食とはいかなるものかを早速見学させてもらった!

そして、その広場の狭さに僕は2度驚かせられる。
これ・・300人どころか150人も入れないじゃ・・?
大学には4学年があり、1学年あたり10学部、1学部で30人と数えても・・・
学生全員がここを利用すると言う訳でもないだろうけど、
こりゃ流石に利用希望者を収納できないのでは・・? 
だから便所飯が絶えずに存在するのか・・!! 大学・・恐ろしいとこ・・!


まぁまだ受かっても無いから心配する事じゃないな、
それよい学食のおばちゃんって実在してたんだね・・!ちと感動した。
とりあえず大学と言えばカレーでしょっと、カツカレーを注文するが、
前の女の子が日本語下手すぎておばちゃんが困ってた。
面接の対応は教えてもらったのに、注文する術は学んで無かったのか。

ちょっと量は少ないけど、たった360円のカツカレーをいただき、
午後の面接のイメージトレーニングを始める。
最近日本の大企業は大人しい子を取らないとか、
一発芸に優れた人間を特別枠で採用するとか、訳分からない世界になってるらしいが、
大学の面接はいやはやどうなろうのやら・・・全く想像つかなくなった。


13:30 別名タコ部屋と言う待合室に、30人全員また再び集まる。
今度はみな参考書やメモより自分の服装やルックスの整いに取り掛かってた。
人間顔より中身とかよく言うけど、ぶっちゃけ初対面だと見た目が10割だろ。
どの国籍の留学生も今日のためにだけに買いましたみたいなスーツを着こなしてる。
女の子もリクルートスーツで決めている。こんなクソ寒い日で全員スカートです。
こんなまるで職活会場のようなとこで、一人だけ異色を放つ男が・・!

まぁ僕なんですけどね。
普通にジーパンとジャケットで行きました。
別に見た目だらしない服装じゃなければ良いんじゃね?と言う
普通に普段仕事してる時のスタイルで行きました。 
大人の余裕って奴ですね。

ごめんなさい、嘘つきました。1科目目から焦ってました。
某有名潜入ゲーだったら一人体格近い子を〆って、
トイレ連れ込んで服装チェンジできるんだが・・・
流石にリアルやっちまったら試験以前の問題になりそうやし・・

っと、無駄な事に脳力全快してたこの時、驚く展開が・・・!
続きはCM待たなくても今すぐ書きますが、
なんと元々予定してた面接は1対1の個室で行うはずでしたが、
なんと、ここで急遽5人1組でのグループ面接に急変更。

一気に教室が騒然となりました。
そりゃもう今まで個人面接と思ってたのに、いきなり同伴者4人ですよ。
テラ圧迫面接w

そして更に脅威な事実が発覚・・・! 
おいら面接は3番目予定だった・・・!
つまり第1グループですっ! 心の準備すらできねぇ。

そのまま監視委員に連行されて、面接室に入る我々。
面接官は白毛が眩しい顔つきが優しいナイスミドルが左に。
喋り口調がとってもやさしいお母さんみたいな女性が中央。
最後に一番見た目が厳しそうなキャリアウーマン風女性が右に。

3対5。
挨拶すらまだかわせぬまま、第1質問が男性教官から切り出される。
「日本では数多くの大学がありますが、何故本校を選んでくれたのですか?」

なんという真正面なポピュラー質問。

因みに僕座席3番だから、
一列中左から回答始めても、右から回答始めても3番目と言うお得な位置。
更にこの5人中僕を除いて全部中国人でアルよ。 

質問自体は超王道過ぎて多分この子達なら模範的な回答が出てくるだろうと、
僕はそう思って居たんですが・・・
なんか全員緊張しすぎて声が上がっちゃってたw
と言うか左隣に居るグループ唯一の女の子が震えてる震えてるww
そして答えが日本語になってないw
面接官に落ち着いて落ち着いてっとまで言われる始末。
そりゃ震え出すわよ、グループ面接なんって聞いてないだろうしね、
これ中々プレッシャーが凄いのですよ、
自分の前に発言した内容と全く同じ回答しちゃまずいと言う心理的圧力が辛い。

少し声が上がったり、震えてたりしてたけど、
まぁ流石に13億の人間から選別され出した特選素材の子達、
内容はとっても立派なものでした。
でも少し華やかしすぎて現実面が見えてないと言う感じがしたので、
僕の番はちと違う視点で生活面、現実的な経済面で学校を選択したと正直に答えた。
若い彼らと違って、学校生活のみを謳歌すればいいと言う訳にはいかないのさ、
仕送りが無いんだよ! 自分で稼ぎながら勉強しないと行けないのさ!
ド田舎の学校受かってもバイト無かったら続けれないし、
東京都心の学校受かっても生活費がバカ高いから同じく無理!
だから中間を取って大阪にしたんだ。

そして第2問
「何故この学部を選んだ?」

第3問
「これからこの学部でどう勉強していきたいのか?」

続けて聞かれた質問もかなりの王道的な問題でした。
いまさらだけど、僕が選んだ学部は社会文化学科。
ここの質問に対しても、僕のスタンスは”正直に話す”事に徹した。
こんな年にいまだに夢とか希望とか語ってもしょうもないからねぇ。
すべて現実面の話をしました。

そして最後の第4問
「先ほど出題した小論文について、もう一度自分の考えで発表してください」

うわぁー・・!
マジっすかw おいら小論文で中国の事ぼろくそ書いたんですけどw
今のグループ中僕以外全員中国人っすよw 
この後教室出たらおいらフルボッコじゃないですかw
しかも今回に限り左とか右とかの座席順じゃなくて、
手を先に挙げた人から回答してくださいとかw

ちくしょーw もうヤケだw 
真っ先に手を挙げてペラペラ答えてやったよ。
ここは大人が真っ先に答えないとダメじゃないかっと思って、
ついカッとやっちゃいました。今は凄い後悔してる。

もうなんというか、色々散々な一日でしたね。
とりあえず全部終わって教室から出た瞬間、疲れが一気に体に来ました。
しかもクッソ寒いしw
時間まだまだ早いし、大阪もう少し散策しようかなーと思ったけど、
もうこの時点で、早く広島の自宅に帰りたい気持ちで一杯だったよ。


が、ここで記事は終わらない。

試験の後、JR駅まで歩いていく途中、
同じ1グループ目の男女組から声をかけられた。
残念ながらフルボッコ大会開催予告ではなく、試験感想とか色々聞かれました。

どうやらうちのクラスですげー化け物秀才が居るらしく、
ペーパーテストで満点取ってて、何故東大行かないんだよとか、
みんな凄いプレッシャーを抱いてたとか。
そんな情報いらんで・・! マジいらんでッ!
これ以上僕の胃を刺激しないで・・!

とまぁ何故か二人組みとなんかご親睦出来て、
挙句に女の子の方から観光地のおすすめとか猛烈にプッシュされて、
結局僕はクソ寒い天気の中で、大阪城を回ってから広島に戻りました。


さぁ残りは2月9日、茨城だ!

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